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INTERVIEW

2023年3月展「PLUG IN│Editorial GRAND PRIX」に選ばれた「キュリアスデザイン」
服と帽子のアイテム超えた一体感に高評価

キュリアスデザイン
UPLOADED 20 JUNE, 2023

 2023年3月に開催された合同展「PLUG IN│Editorial」(繊研新聞社、CREDITSの共催)で、来場者が印象に残ったブランドを選ぶ「プラグイン/エディトリアル・グランプリ」一位に輝いたのは婦人服のキュリアスデザイン(片葺洋三社長)だった。創業99年の帽子製造卸の水野ミリナー(東京、五十嵐敬太郎社長)と協業して同一テーマで帽子と服を展示して最高得票を獲得した。
 「従来の企画、既存のMD手法にとらわれない提案」「体験型店作りになっていた」「(服も帽子も)感度が高かった」、「まとまりを感じた」、「帽子のモード感がアップしてファッションとして一体感があった」と来場者の書き込み。
 披露したのは「帽子を中心にスタリング提案するセレクトショップ」。ブースを1つのセレクトショップに見立ててコンセプトを作り、帽子の「ミリナ」と婦人服の「パルクアン」で編集した。提案を分かりやすく強調するために、あえてマネキンボディを2体に絞り、色使いや素材感を合わせて統一感を打ち出した。内装やディスプレイを作り込み、ブース壁面を飾ったビジュアルは共同で撮影し、帽子の什器を開発。足掛け2年の成果が結実した。

 キュリアスデザインは2019年創業の新興企業で、店作りや体験型販売を追求している企画販売会社。今回の協業は「帽子だけではコーディネートのイメージがわかない」とのバイヤーの要望に応え、新しい売り場提案まで高める目標で始まった。企画会議ではテーマ議論にはじまり、流行の服と同じ素材感や色使いなどMDを見直し、売り場を想定した商品構成、コーディネート提案、VMD、内装、ビジュアルと話し込んだ。そこから新ブランド「ミリナ」が誕生した。
 プロジェクトでは「店頭から発想することを徹底した」と片葺さん。水野ミリナーが長年、蓄積してきた日本の技術力、生産力という強みが発揮されると読んだからだ。「服に合う商品作り、見せ方など改めて気付いたことが多かった」と水野ミリナー商品部の高橋ゆかりさん。
 出展で有力店への出店が決まった。今後は「今回の提案を骨格にして肉付けして充実させていく」(髙橋さん)方針だ。

キュリアスデザインの片葺洋三社長の話
“アイテム構造“を超えてリアルなユカの育成へ

受賞の感想を

グランプリに選ばれ、光栄です。今回の出展ではバイヤーに分かりやすく伝えるために展示ボディを2体に絞り、デザインやスタイリング提案を重視しました。また、「デザインし、作って、売る」姿勢と服と帽子との一体感を打ち出すために什器や内装ビジュアルにもこだわりました。そこが評価されたと思います。商談の結果も上々でした。

提案で強調したかった点は

今回は、帽子と服を同じファッションとして一体に提案することを狙いました。まず考えたのは一体感が欠落している原因でした。行きついたのはアイテム別の構造でした。つまり、単品売り場の中でアイテムごとの生産・販売の仕組みが発展した結果、在庫の持ち方、企画立案、売り場作りまでアイテム別の壁が高くなった。その中で、服とのスタイリングを意識した売り場作りやVMDが失われたと考えました。しかし、実際にそのズレを解消するのには時間がかかりました。

ポイントを教えてください

私は、服屋にとって一番大事なのは店舗空間だと思います。アイテムの違いやMDの垣根を超えるために、そこに立ち返って提案しました。そもそも店は消費者にとって商品やブランドに出会う入り口です。同時に時代の感性を感じる場でもあります。もっと売り手や作り手は店舗で時代感を表現すべきなのです。そのことは起業前に大阪の南船場で8年間セレクトショップを運営した際にも、その後に複数のアパレル企業で新規出店や期間限定店の開設・運営に携わったときにも痛感したことです。ところが、近年、多くの企業が出店のためのハコ作りや業態開発に躍起になり、ECの伸長に目を奪われて主体的な発信や時代感のある売り場作りが弱くなってしまった。売り場でのリアルな体験に勝るものはありません。事実、好調ブランドは店舗の空間作りや発信に取り組み、腐心しています。そこに学ぶ必要があります。それを私は“リアルなユカ”作りと呼んでいます。

リアルなユカですか

出店ありきでの業態開発や、EC頼みでなく、時代感を盛り込んだ売り場作りや購入体験の提供に力を入れるべきです。アイテムの垣根を越えたMDやVMDで時代が編集された売り場ならば会話やコミュニケーションが広がるのです。いかにリアルなユカを育てていくのか、それが、これからの小売業が向かう方向だと思います。

【出展ブランド】
「キュリアスデザイン」:意外性のある組み合わせから生まれる新しいフォルムと、自分らしくいられる「デザイン」を身にまとうことで得られるリラックス感をデザインで表現。個性と個性が「出会う」「集う」ことで、アートを生み出していく新しい社会の中で生きるブランド

【事務局メモ】
ECの市場シェアが2割を超える時代にあって未知なる体験や新しい出会い、コミュニケーションを創出するリアルな空間をどう作り、提供するか。改めて店舗の在り方、リアルな売り場の果たす機能が問われていると感じる。片葺社長が強調するように店舗を構成するのは内装やVMD、演出の技術力のみならず、スタッフの接客技術や醸し出す雰囲気などの人的要素(スタッフ力)、扱う商品の構成や編集の質感などの商品要素(MD力、商品調達力)、さらにサービスやイベント、フェアの企画力(ソフト力)の総合だ。その実現には「総合プロデューサー」が伴奏していると心強い。そんな試みが結実したのが今回のキュリアスデザインのブースだった。同社が目指す「時代の感性を編集したリアルなユカ作り」が展示会の中でも広がっていくことを来場者ともに期待している。By スタッフN

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